体のことを考えすぎるあなたへ
日常生活での賢い健康法
B”目的意識”をもって歩けば運動不足は解消できる
 成人ならだれでも、一日に300〜500カロリーを消費する運動をしなければならないといわれています。300カロリーの運動量がどの程度のものかといえば、一分間に100メートルの速さで一時間歩き続けるにと同じです。日頃、エレベーターやタクシーの世話になりっぱなしの人にとってはこの数字を達成することは、ほとんど不可能に違いありません。
 そこで提案したいのが、きわめて基本的な”歩く”ということです。一日に一時間なんてとても歩けないという人も当然いるに違いありませんが、歩くことの質を高めることで時間的な不足分をカバーすることはできます。
 たとえば、自宅から駅に向かう場合、電柱と電柱の間を何歩で歩くなどと目標を決めて、それを実行してみる。敷石のある道なら一つおきに歩いてみるなど、同じ歩くのでも
目的意識をもって歩くようにしてみてはどうでしょう。そのほかにも、赤信号では立ち止まらず足踏みをしながら待つ。エレベーターに乗らない日を決めて、その日は階段を使うタクシーの基本料金でいける場所は歩くなど、人によってさまざまなテーマが見つけられるはずです。こうしたテーマの設定は、何も歩くことだけでなく、ジョギングをしている人にも有効です。

C階段を利用するだけで運動量はこんなに違う

 
運動不足の人は一日に一時間か、もしくは一万歩を歩くようにおすすめしたい。しかし、現実問題としてサラリーマンが一日に一万歩を歩くのは大変なことです。いろいろな事情でできない人も多いと思います。そういった人は、階段を有効に利用することです。
 階段の上り下りは歩くことに比べ、足腰の筋肉への負担もはるかに多い。またカロリーの面でも、普通の歩きでは一分間に4カロリー前後なのに、階段の上り下りは10カロリーと2倍以上になっています。
 したがって一日一万歩に達しない人は、その分を階段の上り下りで補うことができます。JRや地下鉄の駅にしてもビルにしても、いたるところに階段はあるのですから、その気にさえなれば、歩くことと同じようにいつでもできます。
 ある程度、心臓や筋肉に負担をかけるから運動になるのですが、無理は禁物です。自分の体力に合えあせて、上りがきつければ下りだけにするとか、短い階段なら上るとかすればいいでしょう。エスカレーターに乗りながら、階段と同じように上り下りしている人がいます。せっかちな日本人を象徴している姿ですが、時間も短縮できますし運動にもなるのですから、それもいいでしょう。

D”人間ドック”でOKが出ても、安心するのはまだ早い
 
「治療よりも予防」というのが、近代医学の考え方の柱です。事実、ワクチンの予防注射やレントゲン検診の普及によって、数々の伝染病が克服されてきました。日本でも、不治の病とされていた結核は、集団検診の徹底と抗生物質によって、死亡原因の第一位から下位へと落ちました。かわって浮上してきたのが、ガンや心臓病などのいわゆる成人病です。
 いまのところ、
成人病には特効薬はありません。そのため、予防する意味の早期発見が何よりも重要となるわけです。集団検診や短期の人間ドックによる検診を信頼しすぎると、大きな落とし穴にはまる恐れがありますから注意が必要です。
 日本の予防医学は結核の検診をモデルにしていますから、相変わらずレントゲン写真のチェックを流れ作業のようにやっているのが現状です。たいがい、経験の浅い医師が一人のレントゲン写真をわずか一分くらいで診断するというケースが多いのです。こんな診断によって、たとえ「異常ナシ」とされても、安心してしまうわけにはいきません。とくに、
ガンの検査の場合、一枚のレントゲン写真で早期に発見するのは至難の業とはいえないまでも、見落とされることも少なくありません。
 しかし、集団検診でガンの白黒を判定するのは、どだい無理なことなのです。また、半日とか3時間の短期ドックも、集団検診よりはましという程度で似たようなものです。そして問題は、いったん検査で「異常ナシ」と言われると、もうすっかり安心してしまう人が多いことです。
 たとえば、体の具合が少し悪いといった自覚症状があるのに、検診や短期ドックで大丈夫だったからと放置してしまうことがあります。つまり、人間ドックならパーフェクトだと思われているのです。胃がんを例にとると、まず胃レントゲンの間接撮影では、初期の小さなガンをとらえる可能性は非常に低いのです。
完璧を期すなら、熟練した専門医に直接撮影の胃透視、内視鏡検査などによって、じっくり見てもらう必要があります。
 このくらいの検査を一年に1回しておけば、まあ胃ガンについては安心です。”人間ドック”と名づけるなら、ほんとうは体の各部分に関して、こうした精密な検査をすべて行うことが当たり前なのですが、実際は”ドック”の大安売りなのです。たしかに、短期ドックでも、何もしないよりはいいに違いありませんが、
安心するのは禁物と強調しておきます。