体のことを考えすぎるあなたへ
日常生活での賢い健康法
K胃腸薬を常用しいいると、胃ガンの発見が遅れることがある
 日本人はもともと農耕民族で、肉ではなく米や野菜を中心とした、いわゆる菜食主義でした。したがって、欧米人のように脂肪の多い食べ物をとる民族とちがい、それほど消化に胃液を必要としない体質になっています。しかし、あまり消化のいいものばかりを食べていると、胃液があまってしまうことになります。だから、
日本人には胃酸過多を訴える人が多い。
 そのため、日本で胃腸薬といった場合、大半は制酸剤なのです。最近の医学では、一口に胃腸疾患といっても、病気の症状やその人の胃の酸度に応じて、いろいろなタイプの薬が考えられていますが、その中で一番多いのが胃酸の分泌をおさえる制酸剤で、市販されている胃腸薬のほとんどがそうです。それらの制酸剤の効果の一つに、酸の分泌を少しおさえ、さらに中和させて、いかにも出ていないように感じさせるということがあります。つまり、
胸焼けとか胃の痛みを薬によって人間の頭に感じさせないようにしてしまうのです。
 胃腸薬を常用していない人は、胃の痛みを感じれば、その程度によっては医者にみてもらうでしょう。ところが、常用者は薬によって胃の痛みなどを感じなくなっているので、よほどひどい痛みがないかぎり医師にかかることはありません。そのため、
胃潰瘍や胃ガンの発見が遅れてしまうことがよくあるのです。
 また、胃腸薬を常用すると慢性的に胃酸中和の状態を作り出すことから、胃が過保護になってしまう。胃は、入ってきた食べ物に応じて酸の分泌を多くしたり、少なくしたりするのですが、
胃腸薬によって本来の働きをしなくてもよくなるので胃の機能は弱まるばかりです。
 胃や十二指腸というのは、非常に敏感な臓器でストレスに弱く、ちょっと不摂生すると調子が悪くなるものです。たとえていえば、胃腸というのは信号機みたいなもので、青が黄色になり、そして黄色が赤になる。そうかと思うと赤が青にかわったりする。ところが、そんなにしょっちゅうかわられたら、忙しくてかなわないと信号機のスイッチを切ってしまったらどうなるでしょうか。そうなると事故が起きないわけはありません。
 それと同じように、食欲がなく胃の具合も悪いというのは、きのう飲みすぎたせいだということを信号として送っているのです。信号機でいえば黄色になっているわけです。それで、きょうは酒を止めようとなれば、黄色の信号が青にかわるのはおわかりいただけよう。しかし、胃腸薬でも飲んでおけば大丈夫だといって薬を飲み、胃がスッキリしたから、また今夜も飲みに行こうというのでは
、その警告がまったく無意味になってしまいます。
 胃腸薬にかぎらず、
薬というのはほんとうに必要なときに必要な分だけとる、という原則を忘れないでいただきたい。



Lお茶や牛乳で飲んでいい薬、ダメな薬とは
 薬というのは、たいがい食後に飲むものと決まっている。水を汲みにいくのが面倒くさいからと、お茶や牛乳などで飲んでしまう人もいるが、それでも薬の効きめがあるのでしょうか。これは、よく聞かれる質問の一つです。
 よく薬は水か白湯で飲むものだと言われていますが、なかには、お茶や牛乳で飲んでもかまわない薬もあります。食後、水や白湯で薬を飲んだとしても、少し前に食べたものやその後に飲んだお茶などが入っているのですから、必ずしも白湯で飲まなければならないということはありません。
 
胃薬の中でも制酸剤などは、胃の中に長い時間入っているものですから、その後にお茶が胃の中に入ってきても効果が薄れるわけではありません。そのため、はじめからお茶で飲んでもかまわないのです。また、消化酵素剤も牛乳で飲んでもお茶で飲んでも、その効力は落ちない薬です。
 それと、痛み止めの薬、たとえば、消炎酵素剤といわれるリウマチや関節痛、筋肉痛などの痛みを抑える薬も、お茶や牛乳で飲んでもいい薬です。むしろ痛み止めの薬には胃に入ったときに、胃酸の分泌を盛んにし、胃壁をただれさせる副作用がありますから、胃酸を中和させるために牛乳などを飲んだほうがいいこともあります。
 それ以外の薬については、水や白湯で飲むべきです。貧血のときに飲む鉄剤をお茶で飲むと、お茶に含まれるタンニン酸鉄が鉄分と結合してタンニン酸鉄となるように、お茶や牛乳などといしょに飲むと化学変化を起こしてしまう薬も多いので、よく注意したほうがよいでしょう。
 薬が化学変化を起こしやすい飲み物は、酸味のあるレモンティーやジュースなどで、これらといしょに飲むのは絶対避けた方が良い。
 ともかく、
医師からもらう薬にしても、市販の薬にしても水や白湯で飲むのが、一番無難で安全だということはたしかです。