成人病が気になるあなたへ
食べ物、食べ方でこんなに違う
(22)減量したいなら、まずご飯の量を20パーセント減らせ
 
肥満による健康上の問題を抜本的に解決するには、減量以外にありません。それほど太りすぎでもない若い女性が、いささか過敏に痩せる努力を続けることには賛成できませんが、明らかに太っている場合、適当なウエート・コントロールは必要でしょう。
 世の中には、さまざまなダイエットの本が氾濫していますが、医学的な立場に立てば、
減量の正しいやり方は食事と運動の組合せであり、それも個人の自覚に負うところが多いため、実行はむつかしい。
 そのため、大半の人は減量を決意しても、その心がまえが持続できずに挫折してしまうようです。しかし、いっぽうで急に減量しようとするあまり、かえって不健康な結果を招いてしまう人も少なくないようですから、注意が必要です。
 たとえば、無理な食事制限をすると、たしかに体重は減ることになりますが、それと同時に体調も確実に崩れるものです。私は、10キロオーバーの人に対して、
1ヶ月に1キロずつ減量することを目安に、とアドバイスしています。これくらいのコントロールなら体のバランスを崩すことはありません。
 よくプロボクサーが短期間にものすごい減量をしますが、彼らの場合、日頃から猛烈なトレーニングをして鍛えているから可能なのであって、一般の人がそれをやると心臓はガタガタになるし、へたをすれば急性肝炎を起こしてしまいます。また絶食のあとに突然食事をすると急性胃腸炎を起こすこともあります。
 絶食は少し極端とはいえ、極端なカロリー減らしをすると、ものごとに対する意欲がなくなり、うつ状態をつくる原因にもなります。人間は食べ物からエネルギーをとり入れているのですから、これは当然です。減量法はまず1ヶ月に1キロの限度を守りたい。
 その場合、
体のバランスを保ちながら、同時に脳の満腹中枢を少しずつ慣らしていくのがポイントで、それにはまずご飯の量を20〜30パーセント減らすことから始めるといいでしょう。
 つまり、徐々に1回1回の食事の量を減らしていくことによって、満腹中枢を”だまし”ていくわけです。急激に量を減らすと、脳は強い飢餓感を覚えます。したがって、次の食事の機会に、その不足分をカバーしなければ・・・・・・ということになり、それが猛烈な食欲となってあらわれるのです。
 だから、はじめはおかずの量を変えずに、ご飯の量だけ減らしていくようにするといい。また満腹中枢を”だます”には、よく噛むことも効果があります。そうすれば、体のほかの部分に故障を起こすことなく減量ができるでしょう。

(23)成人病の元凶は心の問題にある
 いま地球上のあちこちで飢えている人々の存在を考えれば、捨てたりするのはもっての他だが、しかし「残すのはもったいない」という人たちは、そもそも食べ物を買い込みすぎ、量も作り過ぎているのだと言うことに気がついていない。はやりの立食パーティなどでも、ご馳走を山のように取り皿に盛りつけている人をみかける。そして酒を飲みながら、それをペロリとたいらげるのだから、かなりのカロリーである。
 どうも人間には「適量を食べる」ということがむずかしいらしい。犬や猫は、一定量を食べると必ず器から離れるから、「ああ、これが適量か」とわかって、次回からはその量だけを与えれば残すこともなく、なめるように食べてしまう。飼い主がチャンとしていれば、肥満体もなくきわめて健康です。それが人間にはできないのです。
 ところが、問題になっている成人病の中には、過食、過飲が原因
となる病気が多くなっています。なかでも、最近とみに増えてきた症状に高脂血症というものがあります。もちろん、それ自体は病気ではなく、血液中に脂肪分が多いという状態を意味するのですが、じつはこれがクセもので、やがて数々の成人病のいずれかを招き寄せる原因となるのです。
 血中に存在する脂肪分が高くなった場合、その血液を、血漿部分と血清とに分けてみると、血清の部分にカイロミクロンというクリーム状の層が現われる。軽度の高脂血漿でも牛乳を混ぜたような白濁層になりますが、そのどろどろした血液が体中を回るのです。こうなると、脳や心臓の細い血管や肝臓などの部分で、”交通障害”がいつ起こっても不思議ではありません。
 この高脂血漿の原因のほとんどが過食ですから標準体重X30カロリーという1日の必要量以上のカロリーをとらないこと。そして、脂肪の多い食べ物は避けることです。どうしても肉類を食べたければ脂身をのぞいたところを食べ、糖分は控えるようにしたい。
 しかし、この際なにより実行したいのは
、家族にも厳命して食べ物をつくり過ぎないようにすることです。そして、いつでも適量を食べることができるという、この平和のありがたさを、この平和のありがたさを存分に味わうことではないでしょうか