成人病が気になるあなたへ
食べ物、食べ方でこんなに違う
高脂血症

 年々、日本人の平均寿命は延び、いまでは世界一の長寿国になっています。平均寿命が延びた理由として、新生児の死亡率が大幅に減ったことや、医学の進歩で、以前は簡単に亡くなっていた脳卒中や心筋梗塞の救命率が上がり、さらに各種のガンを早期発見によって手術や放射線療法で治癒したり、延命させることができるようになったことがあげられる。
 たしかに文明の進歩は医学の進歩をもたらし、平均寿命を延ばしはしましたが、多くの人が健康で長生きしているかというと、そうではありません。
 世の中が発展すればするほどストレスが増え、胃や十二指腸の潰瘍が非常に多くなっています。さらに、”豊かな食生活”が肥満人間を増やし、成人病の原因ともなっています。
 
私が子どものころは糖尿病などほとんど聞いたこともなかったし、胆石症や脂肪肝などという病気も耳にしたこともありませんでした。ところが、今の成人病の主流をなしているのはそうした病気がほとんどで、それはすべて自分たちの手でつくった病気といっても過言ではありません。
 厚生省の人口動態統計によると、昭和30年までは結核が死因のトップをしめていました。その後、25年間は脳卒中がトップとなり、そしてガンが死因の第一位に出てきたのです。
 

人間が長生きすればするほど、ガンになる確率は高くなるので、死因のトップになるのは当然といえが当然のことなのです。トップの座は譲ったとはいえ、脳卒中や心臓病もわずかの差で続いており、この両者を合わせるとガンよりも多い数字になっています。
 
脳卒中や心臓病などの成人病の原因となるのが高脂血症といわれるもので、中年以上の男性の70パーセントは高脂血症といわれています。
 高脂血症とは、それ自体は病気ではなく、血液のなかに脂肪分が多い状態のことを言い、コレステロールとして血管にへばりつく前段階と考えていただければいいでしょう。
 そのコレステロール形成に関係するリポタンパクや中性脂肪、リン脂質、過酸化脂質、遊離脂肪酸などが血液に混ざっているので、たとえて言えば血液に牛乳を混ぜたようになっているのです。
 そんな
ドロドロした濃い血液が体中を回っているのですから、脳や心臓の細い血管が詰まりやすくなって、血液が通らなくなるのも当然です。
 だからといって、コレステロールや中性脂肪がなければ良いのかというと、これらはホルモンや消化液である胆汁酸などをつくるためになくてはならないのもです。

 人間の体の中にあるもので、いらないものはない。ただし、必要な分だけほどほどにあるというのが健康にとっていちばん良いのです。
 なぜ高脂血症になるのかというと、生まれつきの場合を除いては、すべて食べすぎ、飲みすぎの結果なのです。
 
日常の食生活の中で肉食偏重、高脂肪食、高カロリー食、アルコール類の多量摂取、高糖質食のいずれかをしていると、中性脂肪が増えてきて高脂血症になってしまう。それに加えて間食や夜食などのクセがある人は、非常に高い確率で高脂血症にかかりやすいといえる。
 以前から日本では「もりもり食べて、もりもり働く」という考え方がありますが、これは間違いで、「もりもり働くためには、適当に食べる」のが正しいのです。
 また「恰幅がいい」というのが、一時期、富と名誉の象徴のようにみられていましたが、食料難時代ならともかく、いまでは「短命」のシンボルでしかない。アメリカでは、太りすぎの人を管理職にしないというのが常識になっています。その理由は、自分の健康管理もできない人間が他人の管理などできるわけがないというものですが、非常に説得力があります。それに影響されて、日本でも肥満を忌避するようになったのは、いいことです。
 
人間は年齢とともに運動量は落ちてくるのですから、食事の量もそれに合わせて減らさなければならない。どうしても、お腹がすいてしかたがないという人は、こんにゃくやところてんで我慢すること。そして、牛乳、野菜サラダ、トマトなどの高栄養、低カロリーの食品をふんだんに摂るよう心がければ、高脂血症、つまり成人病を防ぐことができるのです。