成人病が気になるあなたへ
食べ物、食べ方でこんなに違う
G食事の時間が不規則な人は、食事を五回に分けてみる
 一日に三度の食事という習慣は、世界的にみても、もっともポピュラーなものです。しかし、三度という回数は共通でも、その時間や食べ方はまちまちのようです。たとえば、 第三次産業の多い日本やアメリカでは、ビジネスマンが多く、仕事は時間との闘いです。
 基本的な労働時間は9時から5時までで、昼食は12時から1時というのが大半でしょう。しかし、問題は5時以降です。世界各国から”働きすぎ”と攻撃されている日本の労働者には、残業はつきものです。いまだに5時きっかりに退社すると白い目で見られたり、また、たとえ会社を出る時間が早くても、帰りに「ちょっと一杯」と飲み屋に寄る人が多い。「これがアメリカだったら即座に離婚だ」などといわれる帰宅時間の遅さは、あまりにも有名です。大都市の場合、これに1時間を超える通勤時間が加わることもあって、昼食から夕食までの時間が、きわめて不規則になりやすい。不規則というよりは、食事と食事の間が長くなりすぎるわけです。その結果どうなるかというと、空腹の反動か一気に過食へという悪いパターンになりやすい。さらに、このパターンになると、1日の総摂取カロリーが同じでも、肥満や高脂血症、高血糖になる恐れがあります。
 食事回数と摂取カロリー、肥満度を調査した結果によると、
食事回数が5回以上の人は、1日の総摂取カロリーは回数の少ない人を上回っているにもかかわらず、平均体重や肥満度は低くなっています。
 また、食事回数の少ない人のほうが、心臓疾患が多いという結果も出ています。こうした点を考えると、食事と食事の間の時間は、できるだけ短いほうが体のためには良いといえそうです。つまり、空腹である時間を少なくしてやるということです。
 最近、栄養学の研究が進んで、何をどのくらい食べたらいいか、といった食事のバランスについては意識も高まってきています。が、食事のタイミングや回数に関しては、意外に盲点になっているようですに思われます。
 夕方に仕事の打ち合わせなどがあるとき、相手が食事を提案しても、「まだ、お腹がすいていませんから」などと断る人が少なくない。これも、食事は1日に3度、それも十分空腹になってからでないと食べてはいけないという思い込みがあるからです。
 医学的には、ほとんどの量の食事をこまめに食べたほうが良いわけですから、そんなチャンスにはコーヒーなどを飲むより、きちんと食べるのが望ましい。もしも、その機会を逃がして夕食が遅くなるようでは、かえってマイナスです。1日に3度と決めてかかるから食事が不規則になるので、
5回くらいに分けて食べようと思えば良いのです。

Hしょぱい食べ物が好きな人は、野菜、果物を多くとる
 
塩分のとりすぎが、百害あって一利なしであることは、よく知られています。とは言え、塩分(ナトリウム)の摂りすぎが問題になるのは、体内でのカリウムとのバランスがとれないという場合のことです。少しくらい塩分をとりすぎても、それに見合った量のカリウムをとっていれば、その害はある程度カバーすることができます。
 そのナトリウムとカリウムのバランスですが、1日の塩分摂取量を理想的な10グラム程度だとすると、カリウムは2〜4グラム必要になります。しかし、日本人は平均すると、1日にわずかに1.6グラムしかカリウムをとっていないのです。そして、カリウムは炭水化物を体内で処理する働きに欠かせません。そのため、お米のご飯をよく食べる日本人は、カリウムをとってもすぐ消費してしまうから、常に不足しているのです。お米と漬物のおいしい東北地方に高血圧の人が多いのも、こうした理由からです。
 そこで
しょっぱい食べ物が好きな人は、日頃からカリウムの豊富な食べ物をとることです。野菜、果物、豆腐、肉、魚介類には、まんべんなくカリウムが含まれているので、こうした食品をバランスよく、あまり塩分を使わない調理法で食べることです。

I塩分のとりすぎが心配な人の漬物の食べ方
 戦後60年以上たって、日本人の食生活は欧米型にかわってきたといっても、年配者や地方出身者の中には、まだまだご飯に味噌汁、漬物がないと食べた気がしないという人も多い。こうした食生活を長年続けていれば、どうしても塩分のとりすぎから高血圧の心配が出てくる。しかし、食生活とは文化そのものであり、いくら体に悪いと言われても、うまいものはうまいのです。食事に漬物が欠かせないとなれば、食べるなとは言えないのです。タバコを吸っている人に、肺ガンになるから禁煙したほうが良いといってもなかなか止められないのと同じです。しかし、いくら好きなものでもドクター・ストップがかかって食べられなくならないうちにコントロールしておくことが大事です。漬物にしても、同じ量を食べるなら、せめて醤油はかけないこと。そして、酢をうまく使って味付けすることをお勧めしたい。
 
酢は無塩ですから、塩分を減らすうえで最高の調味料と言えます。さらに、すだち、ゆず、レモンなどを使うと、香りもともなって味はますますよくなります。そのうえ、酢には血管の老廃物であるアテローム・コレステロールの形成を予防する働きがあるため、動脈硬化を防ぐ効果もあります。高血圧ぎみの人や中高年には、おおいに食べてもらいたい食品の一つです。