成人病が気になるあなたへ
食べ物、食べ方でこんなに違う
L食べ過ぎたと思ったときにやっておきたいこと
 暴飲暴食や運動不足が健康の大敵であることは、いまさらいうまでもないでしょう。とはいえ、プロボクサーのように、絶食や猛烈なロードワークで体重をコントロールしようと考えたりすると、かえって命を縮めることになりかねません。
 人間の体は本来、急激な変化を好みません。体の各器官はそれまでのいわば”経験”を情報化して、新しい事態に対応しています。たとえば、これまで一日三食だった人が、ある日から二食に減らしたとしましょう。単純に考えると、摂取カロリーが2/3になって、痩せるような気がしますが、そうはいかないのです。
体は、食事回数の減った分だけ”貯蔵の必要性”を感じ取り、できるだけ皮下脂肪として残しておこうとします。
 
つまり、健康的にカロリーを抑えようと思ったら、朝、昼、晩と平均して少ない食事量にする他ないのです。また、体の機能とは別に「満腹感」の問題もあります。一食抜いてみたり、それを補うために一度に二食分食べたりすると、当然、胃袋はたくさん食べたときを”満足”と感じるようになり、ちょっと油断すると大食いのクセがついてしまいます。
 
学生時代、本格的にスポーツをやっていた人が、就職してしばらくすると急に太ってしまう例が少なくないのも同じ理由です。以前はたくさん食べていても、運動量で消費していたのが、完全なデスクワークになっても満腹感は昔のままですから、つい同じように食べてしまうのです。
 肥満による成人病の代表は心筋梗塞と糖尿病です。悪いことに、こうした病気には特効薬はなく、ひたすら予防に気を配るしか方法がありません。一般には規則正しい食生活と適度の運動という繰り返して聞かされる心得が、ここでも登場します。
 しかし、それができれば悩みはしないというのが、皆さんの実感でしょう。そこで、食べ過ぎてしまった場合を考えてみましょう。だいたい、
食べ過ぎというのは夕食に関してが多い。そこで、まず翌日どんなに胃がムカムカしたり、お腹がはっていても、朝食を抜かないこと。そのかわり、昼も夜もカロリーの少ない食事を摂ることです
 
これは、いってみれば糖尿病の患者さんへのアドバイスと同じことです。一日の摂取カロリーを抑え、野菜、豆腐、上質の肉といった高栄養食を、朝昼晩と均等に食べるわけです。そのいっぽうで、摂り入れてしまったカロリーの消費を考える必要があります普通食べてから、そのカロリーが脂肪として体内に蓄積されるのに数日を要します。したがって目安としては、そうした食べ過ぎの記憶があるうちに、体を動かしてひと汗流すことです。こんな心がまえを”宵越しのカロリーはもつな”と、うまいことを言った人もいるくらいです。

Mステーキを食べればスタミナがつくという思い違い
 「どうも夏バテぎみだから、ステーキでも食べてスタミナをつけよう」という人がいます。が、これは大きな勘違いです。というのも、夏バテした体に必要なのは栄養であって、カロリーではないからです。日本人は、戦後の食料不足を経験したためか、ともすると、高栄養と高カロリーを勘違いしている人が少なくありません。そのため、ステーキ=肉=スタミナ源といった先入観が広くいきわたっているのです。
 たしかに、ステーキは人間の体を維持するのに大切なタンパク質を多く含んではいます。しかし、タンパク質を吸収するためにはビタミンやミネラルが必要になってきます。
夏バテというのは、そのビタミンやミネラルが不足してなるのですから、いくらステーキを食べたとしても栄養は十分に吸収されず、いたずらにカロリーだけを増やしてしまう結果となるのです。
 寒い冬は体温が奪われる割合が大きいため、カロリーが必要となりますが、暑い夏は体の表面から奪われる熱量も少ないから代謝能力も落ち、カロリーもそれほど必要ありません。また、
夏はビタミン類、とくにビタミンB1、B2の消費が他の季節に比べて非常に多いので、カロリーよりもむしろビタミン類の積極的な補給をしなければならないのです。
 日本には昔から
「土用の丑の日にはウナギを食べろ」と言われていますが、これはじつに理にかなった知恵と言えます。と言うのも、ウナギにはビタミンA、D、B2が豊富に含まれており、夏バテを防ぐ効果があるからです。だからと言って、そう毎日ウナギを食べるわけにもいかないので、日常の食生活でビタミンをより多く摂る工夫が必要です。
 まず、
ビタミンB1は米の胚芽に多く含まれていますので、玄米を食べるようにすると良い。肉類では、高価なステーキよりも安い豚肉のほうがビタミン類が多く含まれています。また、ゴマやピーナッツもビタミンB1を豊富に含んでいます。ビタミンB2を摂るなら、納豆やしめサバを食べるのが良いでしょう。さらに牛乳や卵、魚などの良質なタンパク質をとると、ミネラルに加えてビタミンも摂ることができます
 夏バテというのは、暑さというストレスに体がまいってしまうことも原因の一つです。その点からすると、
ビタミン、ミネラルを十分摂っておくとストレスに対して強い抵抗力ができるので、夏の暑さに負けない体をつくることができるのです。
 また、
夏バテは胃にもきており、食欲も落ちがちです。これは、水分の摂りすぎで胃の中が水っぽくなっているため、消化液が薄まり消化力そのものが落ちるからです。そこで、乳製品や果物を中心にして、少しでもたくさんビタミンやミネラルを摂るように心がけてほしいものです。